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EPISODE 10:アメリカ進出・・・その第一歩

旅先での温浴療法が功を奏して、マリーは仕事への情熱を取り戻しました。

元気になって帰国したマリーに夫のアレキサンダーはこの機会に膨大な市場をもつアメリカへ視察旅行にでかけようと、もちかけました。とりあえずアメリカの街や生活やファッションを見てくるだけでも・・・と。

マリーにも異論はありませんでした。さっそくジャーナリストの友人にアメリカのファッション関係者の電話番号を2つ3つ教えてもらい、マリーがデザインした作品を2つのスーツケースに詰め込んで、二人はあわただしく旅立ちました。

友人に教わった電話番号のひとつは「トベ・オフィス」のものでした。トベという女性はアメリカのファッション界の大ボス的存在で、アメリカでファッション界に出入りしたいと思うならば、まず彼女に理解されなければならないとか。そんな予備知識に気後れした二人は、3日間も迷ったすえに、ようやく彼女に会うことにしました。マリーの作品をいくつか携えて・・・。

でもマリーの作品に対する彼女の評価は、「くだらない」の一言でした。マリーたちはもちろんショックを受けました。でも不思議なことに絶望感はわいてきませんでした。トベという女性に何ひとつ魅力を感じなかったからです。マリーたちはすぐに気持ちを切り替えることができました。

そして次に訪ねたのが、あの「WWD紙」です。世界で一番権威のあるファッション新聞、アメリカファッションのバイブルともいわれている新聞、それがWWDです。この訪問がどんな結果を招くことになるかなんて、二人はまったく予期していませんでした。

マリーたちが作品をもって訪れた翌日、WWD紙の記事はマリーへの賛辞で埋め尽くされていました。自分たちのこととは信じられないほどの素晴らしい評価で・・・。

この記事が導火線になって、すべてが動きはじめました。二人は一躍有名になり、興奮の渦の中に巻き込まれていきました。ニューヨークで最も進歩的でシックだといわれているヘンリ・ベンデル店からは取引の話が持ち上がり、「ライフ」誌や「セブンティーン」(アメリカで一番の発行部数を誇るジュニア雑誌)誌などの出版社からは取材の申し入れが殺到しました。

中でも「セブンティーン」の申し入れは、二人にとって夢のような企画でした。その企画とは・・・、「セブンティーン」に掲載するためのオリジナル作品をロンドンでももっともイギリスらしい背景の中で撮り、同時に、ニューヨークのメーカーにその服を作らせて売り出そうというものでした。その一点あたりのデザイン料ときたら、今回の旅費をすっかりまかなっても、まだ余りある金額でした。

セブンティーンの仕事は、イギリスのファッションを紹介する絶好の機会になりそうでした。

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