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EPISODE 40:マリー・クヮントのロンドン

ケンジントン・パレスの監督、ジョン・ヘイズの依頼というのは、ロンドン・ミュージアムで「マリー・クヮントのロンドン」と題した特別展覧会を開くための協力要請でした。

展覧会の期間は1973年11月29日から翌年の6月30日まで。ケンジントン・パレスで開くロンドン・ミュージアムの最後の展示会を、芸術的才能を備えた1人の偉大なデザイナー、マリーの活躍を紹介する場にしたい。マリーの溢れ出るアイデアの数々、独創性とその進化を、マリーの生活と仕事の場である「若くて、新しい街」チェルシーを背景に展示したい・・・と。

「あなたは、このロンドンで、イキイキとした新世代の若者たちの服をクリエイトし続けた。愉快でカラフルで、着ていて楽しく、しかも、きちんとデザインされた服を、資産階級のみならず、あらゆる人に入手可能にした最初のクチュリエはあなただ。過去はさらにエネルギッシュな将来への出発点に過ぎず、それを振り返るのは面倒なことかもしれないが、ぜひとも協力して欲しい。」・・・彼は熱心でした。

ロンドン・ミュージアムが、来年にも、近代的な建物に移るというニュースはマリーも耳にしていました。最後の展覧会が現代の生活に密着したテーマというのも、実にいいアイデア。この私が「題材」と思うと、ちょっと照れくさいけれど・・・。マリーもアレキサンダーも、快く協力を承諾しました。

展示会のカタログの前書きは、かつてマリーがサンデータイムズ賞を受賞したとき、ひとかたならぬバックアップをしてくれたアーネスタイン・カーターが担当してくれることになりました。前書きの冒頭でアーネスタインはこう書き記しています。

「ちょうど良い時期に、ちょうど良い場所で、打ってつけの才能をもって生まれてくる幸運に恵まれる人は稀だ。近年のファッション界において、この運に恵まれた人の名を3人挙げるとすれば、それは、シャネル、ディオール、そしてマリーだ」と。

写真とマリーの作品の数々で構成された特別展覧会には、期間中、マリーのファンのみならず、多くの人が訪れました。

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