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EPISODE 16:デザイナーとしてのマリー

幼いころからデザイナーになることを夢見ていたマリーは、20歳のときにキングス・ロードに「バザー」というブティックをオープンしてから、次から次へと夢を現実のものにしていきました。

デザイナーは単にデザインする才能だけで成功できるものではありません。実力はあっても、その名を知られることもなく埋もれているデザイナーも数多くいることでしょう。マリーを見ていると、デザイナーとして成功していくには、ある種のカリスマ性とチャンスを逃さない勇気と新しいものへのチャレンジが不可欠なのだと思えてきます。

ウェット・ルック・コレクションがその素材の特異性から、2年もの間、生産できなかったことは、マリーたちの事業を大きな危機に陥れましたが、それも常に新しいものに挑戦し続けねばならないデザイナーとしての宿命だとマリーは結論づけていました。

ロリータ・ルック、スクールガール・ルック、ウェット・ルック、キンキィ・ルック・・・・・・どれもみなマリーが生み出し、称賛を浴びた新しいルック。おもしろ半分に着てみた8歳用のリブセーターがヒントになったスキニィリブやニッカーボッカもマリーならではの着想から生まれました。

マリーが発表するルックには服そのものだけでなく、いつも新しい試みが盛り込まれていました。チェーンベルトやショルダーバッグ、長いブーツなどを初めて取り入れたのも彼女でした。トップモード(最先端の服装)のために、新しい素材や新しい縫製方法などを創造する努力はデザイナーの使命だとマリーは思っていました。

とくに、新しい素材や色に関して、マリーはどん欲でした。あるとき、マリーは業者にクレープに若々しい明るい色をつけて欲しいと依頼しました。業者の答えは「到底不可能」というものでした。事実、無理を言って染めてもらった生地は色がにごってイメージとはほど遠いものでした。でもマリーは食い下がりました。織り上がったばかりのクレープを見ると、すでにグレーがかっていて、これでは染めても色が濁ってしまうのは当たり前。マリーは根気強く業者を説得して、まず色を晒してから染めさせてみたのです。結果は大成功。ぐっと鮮明なきれいな生地に染め上げることができました。その生地を使ったコレクションはどんどん売上を伸ばし、とうとう外国からも生地を輸入しなくてはならないほどになりました。

大ヒットしたクリアカラーのフラノを使ったコレクションのときもそうでした。フラノはグレーという先入観から一歩踏み出したことで爆発的なブームになったのです。

色や生地を契機に、新しいセンセーションが起きる・・・。マリーにとって今までになかったものを創り出すという挑戦は、とてもエキサイティングなことでした。

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